日本ロールシャッハ学会
The Japanese Society for the Rorschach and projective Methods

倫理規定・倫理綱領

日本ロールシャッハ学会 倫理規定

(目的)

第 1 条
この規程は、日本ロールシャッハ学会(以下「本会」という。)会員が行うロールシャッハ法などの投映法を中心とする心理検査にかかわる倫理について、その適正を期することを目的とする。
第 2 条
本会は、会員が専門的業務に従事し、研究活動をするに当たって遵守すべき事項に関する倫理綱領を、別に定める。
第 3 条
本会に、前2条に係る事項を審議するために倫理委員会(以下「委員会」という。)を設ける。

(委員会の業務)

第 4 条
  1. 委員会は、第1条の目的及び倫理綱領の目的を達成するため、本会の会長(以下「会長」という。)の指示の下に次の業務を行う。
  2. 本規程及び倫理綱領の改廃に関する審議
  3. 会員の倫理向上に向けての本学会理事会への提言
  4. 会長からの諮問に基づく倫理綱領違反に関する裁定案の答申
  5. その他、委員会が必要と認める業務

(委員会の構成)

第 5 条
  1. 委員会は、会長が指名し、理事会で承認された会員若干名をもって構成する。
  2. 委員長は、理事の中から会長が指名する。
  3. 委員の任期は理事の任期と同じとする。

(委員会の運営)

第 6 条
  1. 委員長は、委員会を開催し、議長となる。
  2. 委員会は、委員の3分の2の出席をもって成立するものとする。
  3. 委員会は、出席委員の5分の4以上の賛成により決定を行う。
  4. 委員長に事故があるとき、又は欠けたときは、委員のうちからあらかじめ互選により指名された者が委員長の職務を代理し、又は委員長の職務を行う。

(委員会の調査)

第 7 条
  1. 委員会は、会長から審議を附託された案件について調査を開始する。
  2. 案件を取り上げる際に、申立人にその旨の通知を行う。
  3. 案件調査が長期に亘る場合、申立人に適宜経過報告を行う。
  4. 案件の当事者になった場合、委員はその職を離れなければならない。

(委員会の報告)

第 8 条
委員長は、会長から審議を附託された日から起算して、3ヶ月以内に審議の結果を会長に報告しなければならない。ただし、資料収集、事情聴取等の調査を要するものはこの限りではない。
2 第4条第3号に定める諮問については、委員長は、会長への報告に際し、その倫理綱領違反をした者に対してとるべき処分としての厳重注意、一定期間の会員資格の停止、会員資格の取消し、その他の裁定案を答申するものとする。

(裁定)

第 9 条
裁定は、本会理事会において理事の3分の2以上の議決によって承認を得た後、会長がこれを行う。
2 裁定結果は、適切と思われる形で公表することができる。

(改廃手続)

第 10 条
この規程の改廃は、委員会の議を経て、本会理事会において理事の3分の2以上の議決によって承認を得た後、会長がこれを行う。
附則
この倫理規程は平成22年10月31日より施行する。

日本ロールシャッハ学会 倫理綱領

日本ロールシャッハ学会(以下「本会」という。)は、本会倫理規程第2条の規定に基づき、この倫理綱領を定める。

前文

本会はロールシャッハ法及びその他の投映法による心理学的理解の臨床活動と研究活動を推進し、会員の資質の向上を図ることを目的として設立された。本会会員は、その臨床活動及び研究によって得られたロールシャッハ法及びその他の投映法を中心とした心理検査の知識と技能を人々の心の健康増進のために用いるよう努めるものである。そのため会員は、常に自らの専門的な心理検査の実践業務及びその研究が人々の生活に重大な影響を与えるものであるという社会的責任を自覚し、以下の綱領を遵守する義務を負うものである。

(責任)

第 1 条
会員は、自らの専門的な心理検査の実践業務や研究が及ぼす結果に責任をもたなければならない。
2 会員は、その業務及び研究の遂行に際しては、常に対象者の利益及び人権を優先させなければならない。

(技能の向上と自覚)

第 2 条
会員は、訓練と経験によって的確と認められた技能によって、対象者に心理検査を行うものである。
2 会員は、前項の心理検査を行うため、常にその知識と技術を研鑽し、高度の技術水準を保つように努めるとともに、自らの能力と技術の限界についても十分にわきまえておかなければならない。
3 会員は、心理検査の実践業務及び研究においては、学会水準で是認され得ない技法または不適切とみなされる技法を用いてはならない。

(臨床的使用)

第 3 条
会員は、対象者の人権に留意し、心理検査の所見が誤用され、若しくは悪用されないよう配慮を怠ってはならない。
第 4 条
会員は、臨床業務の中で心理検査を用いる場合には、その目的と利用の仕方について、対象者または関係者に十分に説明を行った上で、同意を得ることを原則とする。
2 会員は、検査技法が対象者の心身に著しく負担をかけるおそれがある場合、又はその検査所見情報が対象者の援助に直接に結びつかないとみなされる場合には、その実施は差し控えなければならない。
3 会員は、依頼者又は対象者自身から検査結果に関する情報を求められた場合には、情報を伝達することが対象者の福祉に役立つよう、受取り手にふさわしい用語と形式で答えなければならない。

(研究活動)

第 5 条
会員は、心理検査を用いた研究計画を立てるときは、研究の意義を検討すると同時に、研究に協力し参加する対象者が心身の苦痛や不利益をこうむることのないよう十分に配慮しなければならない。
2 会員は、その研究が臨床業務の遂行に支障を来さないように留意し、対象者又は関係者に事前にその目的及び内容を告げ、研究への協力参加の同意を得なければならない。この場合において、対象者は、参加又は不参加を選択することができる自由及び研究進行中での辞退が可能であることを保証しておかなければならない。
3 会員は、その研究の立案・計画・実施・報告などの過程において、研究データの記録保持や厳正な取り扱いを徹底し、捏造、改ざん、盗用、二重投稿などの不正行為を行ってはならず、またそのような行為に加担してはならない。

(秘密保持)

第 6 条
会員は、臨床業務上知り得た事項に関しては、専門家としての判断の下に必要と認めた以外の内容を他に漏らしてはならない。
2 会員は、事例又は研究の公表に際して特定個人の資料を用いる場合には、対象者の秘密を保護する責任をもたなくてはならない。会員をやめた後も、同様とする。

(公開と説明)

第 7 条
会員は、一般の人々に対して心理検査に関する知識又は専門的意見を公開する場合には、公開内容について過度な誇張や偏った一般化がないようにし、公正を期さなければならない。
2 会員は、前項の規定による公開が新聞、ラジオ、テレビジョン、ウェブサイト、一般図書等の場合には、その社会的影響について責任がもてるものであることを条件としなければならない。
3 会員は、心理検査技法の開発、出版又は利用に際し、その用具や説明書等を学術上必要な範囲を超えてみだりに開示・頒布することを慎まなければならない。また、心理検査に関する不適切な出版物や情報によって、検査技法やその結果が誤用・悪用されることがないよう注意しなければならない。
4 会員は、心理学の一般的知識を教授するために使われる入門レベルの教科書若しくは解説書又は一般図書等において、心理検査に用いられる刺激素材の複製又はその一部をそのまま提示し、又は回答・反応に関する示唆に類するものを公開して、現存する心理検査技法の価値を損じないよう注意しなければならない。

(記録の保管)

第 8 条
会員は、対象者の記録を5年間保存しておかなければならない。

(倫理の遵守)

第 9 条
会員は、この倫理綱領を十分に理解し、これに違反することがないように常に注意しなければならない。
2 会員は、違反の申告が発生したときは、倫理委員会の調査を受ける場合がある。
附則
この倫理綱領は平成22年10月31日より発効する。