日本ロールシャッハ学会
The Japanese Society for the Rorschach and projective Methods

設立趣旨

学会設立の経緯

1997年11月29日、日本ロールシャッハ学会がめでたく誕生いたしました。ここに設立までの経緯を簡単ではありますが記して、記録にとどめたいと思います。

以前から全国各地にロールシャッハ法に関する研究会があり、今日それぞれ活発に研究活動を続けております。そのような中で、全国的な組織づくりを進めてはという動きがこれまでも何度かありましたものの、諸々の事情により実現には至っておりませんでした。しかし、全国各地のロールシャッハ研究グループやこのテストに関心を持ち研究を進めている臨床家たちにとって、情報交換および研究促進のための横のつながりが必要な時期にきているのではないか、また『ロールシャッハ研究』誌がこれまで一部そのような役割を果たしてきたのではないかといったことが、31号以降の『ロールシャッハ研究』誌の編集委員会で話しあわれてまいりました。その結果、名古屋ロールシャッハ研究会主催の「ロールシャッハ・シンポジウム'95」(1995年12月2日)の折に開かれた『ロールシャッハ研究』誌の拡大編集委員会で、ロールシャッハ協議会(仮称)の設立と国際的、国内的な交流への方向づけを議題として取り上げることとなりました。その提案理由は、以下のようなものでした。

すなわち、

  1. 各地の研究会の横のつながりが必要な時期にきている。
  2. 国際ロールシャッハ学会という国際的な組織があり、3年に1度の国際大会が開催されている。そのような中で、諸外国からわが国での研究にも関心が向けられており、研究の国際交流が求められているものの、いまだその受け皿としての全国的な組織がない。
  3. 『ロールシャッハ研究』誌の将来を考えると、編集および発行基盤の確立が望まれる。全国組織の共通のフォーラムとして、『ローシャッハ研究』誌を位置づけることができるのではないか。
  4. ロールシャッハ図版の流布や販売、そしてテストの誤用などに際して、倫理的にチェックする公的な組織や機関がない。
  5. ロールシャッハ法の教育や臨床水準に関して、専門的に助言・勧告できる専門家団体が欠如している。

拡大編集委員会で熱心に討議した結果、学会設立の方向でワーキング・グループを組織して詳細をつめることとなり、ワーキング・グループの構成員を全国の主要な研究会から推薦していただきました。また、提案者である『ロールシャッハ研究』誌の現および前編集委員で、設立準備委員会を構成することになりました。推薦いただいた8名のワーキング・グループのメンバーは、1996年2月4日中京大学に参集して会合を開き、会則や会費、機関誌の性質などについて検討して案をまとめ、『ロールシャッハ研究』誌編集委員会に2月下旬に答申いたしました。編集委員会ではさっそくこの答申案を編集同人に提案して意見を求めると共に、発起人の推薦を依頼しました。その結果、編集同人からさまざまな御意見と共に、総勢74名の発起人をご推薦いただきました。設立準備委員会では編集同人からの御意見をもとに学会会則案を作成し、設立趣意書を準備して、1996年9月1日から「日本ロールシャッハ学会」の設立に向けて学会への参加を広く募りました。(別記、設立趣意書を参照のこと。)

学会への加入の呼びかけと同時に、学会の組織化づくりのために、1997年2月11日設立準備委員会を開催し、他学会設立の慣行に従い、発起人の中から理事・監事候補者を選出しました。選出された22名全員にご受諾いただいた後、20名の理事候補者の互選による会長候補者および4名の常任理事候補者の選挙を、4月末日を投票締め切りとして1997年4月10日に郵送で行いました。

なお、本来は金沢ロールシャッハ研究会主催で開催予定であった「ロールシャッハ・シンポジウム'97」を第1回に振り替え、金沢で日本ロールシャッハ学会設立総会および第1回大会を開催することとなりました。

(文責 小川俊樹)

日本ロールシャッハ学会設立趣意書

この度「日本ロールシャッハ学会」(Japanese Society for the Rorschach and Projective Methods)を設立し、わが国におけるロールシャッハ法の発展を期したく、設立の趣意を述べ、入会のご案内を申し上げます。

ロールシャッハ法は、1930年に、内田勇三郎氏によって「教育心理研究」誌上に紹介され、以後、わが国の臨床心理学の査定法として広く用いられて参りました。現在でも心理臨床家にとって馴染み深い技法の一つと申せましょう。この技法の普及と研究に関しては、1958年に片口安史氏を代表とする東京ロールシャッハ研究会編による『ロールシャッハ研究』(Rorschachiana Japonica)が刊行され(1975年まで)、その後も引き続き現在にいたるまで37年の歴史を刻んで参りました。

ロールシャッハ学会の設立は、数年前より計画されておりましたが、1995年12月「ロールシャッハシンポジウム'95」が名古屋で開催されました折『ロールシャッハ研究』誌拡大編集委員会の席上で、「日本ロールシャッハ学会」の設立が改めて検討され、承認されるにいたりました。ロールシャッハ法のさまざまな技法を学び、普及し、研究を充実させ、臨床上の諸問題に一層寄与して参りたいと思います。また国際ロールシャッハ会議への参加が、諸外国では学会単位で参画しているのに対しわが国では個人レベルでしか参加していない現状で、対外的な立ち遅れも否めず、一層の前進を願っております。

ここに「日本ロールシャッハ学会」の設立を準備し、1997年金沢で開催予定の「ロールシャッハシンポジウム'97」に代えて第1回設立総会を行い、それに引き続いて第1回大会を発足する所存です。事業内容としては、従来の「ロールシャッハ研究」を学会機関誌とし、毎年研修会、研究発表、総会を開催したいと考えております。すでにロールシャッハ法、その他の投影法にかかわってこられた方、またこれから心理臨床の場でこれらの技法にかかわろうとされる方々が広く本学会に参加されることを期待いたします。ふるってご参加ください。

1996年9月1日
「日本ロールシャッハ学会」設立発起人一同